一戸建ての訪問査定のとき、基礎にひび割れを発見しました。
「うちの建物は大丈夫でしょうか?」とお客様から聞かれたときに
「大丈夫です。問題ありません。築10年位の建物ならこんなものです。」
と答えたことはありませんか。
もしあなたがこんな答えをしたことがあるなら注意が必要です。
■「大丈夫と答えた理由は何ですか?」
もし具体的に理由を答えられないのであれば、すぐに対策をとる必要があります。
なぜなら、お客様が知りたいのは大丈夫かどうかだけではないからです。「なぜ大丈夫なのか」という理由なのです。しかし、わざわざ「大丈夫な理由を教えてほしい」と聞いてくれるお客様は少数派。ほとんどのお客様は何も言わずに担当者に見切りをつけてしまいます。結果、専任媒介を取得する貴重な機会を失ってしまうのです。
■根拠のない「大丈夫」は危険
売却を任せてもらったとしてもリスクは消えません。売出し中に、あなたが根拠もなく「大丈夫」と言った不具合が実際に大きな瑕疵であったことがわかった。その瑕疵が理由で、予定の売却価格が数百万円も引き下げることになってしまったとしたら・・・。また、あなたが担当した物件の引き渡し後に家の大きな傾きが発覚。瑕疵担保責任を理由に買主から補修を求められてしまった。売主さんからは「大丈夫と言ったじゃないか」と言われるでしょうし、大きなトラブルにつながっていくかもしれません。このような状態にならないために、建物の不具合についての基準を知る必要があるのです。
■建物の不具合の基準を知る
建物の不具合の基準として既存住宅売買かし保険(以降は「かし保険」と略します)の基準を参考にお伝えします。かし保険の基準を参考にする理由は2つあります。
1つは、検査費用の無駄を防ぐためです。かし保険を使う場合、インスペクション(建物現況調査)が必須となります。インスペクションの結果(建物の劣化状態等)でかし保険加入の可否が決まります。(建物の劣化状態が保険基準を満たしていない物件は、補修工事を行って再検査で基準を満たせば保険加入できるようになります)そして、インスペクションを行うためには検査費用がかかります。検査後、かし保険に加入できないことが明らかな不具合があった場合、検査費用は無駄になってしまいます。明らかな不具合とは、基準を超えた建物のひび割れ、建物の傾きなどです。
2つめの理由は、かし保険に加入できないほどの不具合があるということは、取引に影響する可能性が高いということです。具体的には、販売価格、建物の瑕疵担保責任に関係することになります。不具合が重大であるほど、数十万円から数百万円、場合によっては数千万円もの金額的な問題に発展する傾向があります。
■「建物のひび割れ」、「建物の傾き」の基準
建物の不具合の中でも、重要な2つについてご説明します。
1つは「建物のひび割れ」です。ひび割れのことを専門用語で「クラック」といいます。ひび割れをそのままにしておくと、将来的にコンクリートの中にある鉄筋がさびて爆裂する原因となります。ひび割れを調べるには、クラックスケールという道具を使います。ひび割れがあること自体は問題ではありません。髪の毛程度の細いものであればそれほど心配する必要はありません。
ひび割れの基準
建物のひび割れの基準 ひびの太さ(幅)0.5mm以上 深さ20mm以上
※0.3mmはテレフォンカードの厚みとほぼ同じです
2つめは「建物の傾き」です。床、柱、梁に傾きがないかを調べます。一定以上傾いた建物では人が健康に生活することが難しくなり、建物の構造自体も危険な状態になります。
建物の傾きを調べるためには、レーザーレベルという機材を使います。計測結果は数値で確認します。
傾きの基準
建物の傾きの基準 長さ3m以上の距離 6/1000以上
※6/1000とは床面1mに対して6mmの傾斜という意味です
床面の長さ3mの場合、両端の差は18mmとなります
ビー玉やパチンコ玉が転がして「欠陥住宅だ!」と勘違いされる方がいますが、建物には施工誤差があり床も完全に水平ではありません。少しの傾斜があれば、ビー玉もパチンコ玉も転がるものです。ビー玉やパチンコ玉が転がるからといって欠陥住宅になるわけではない、ということに注意してください。
■差別化につながる「簡易インスペクション」のすすめ
上記のように保険加入可能かをある程度の判断ができると、訪問査定のとき根拠を持ってお客様の質問に答えられるようになります。訪問査定の際にお客様から信頼を得られる方法、これを私は「簡易インスペクション」と呼んでいます。実は建物の不具合について根拠をもって答えられる営業担当者は多くありません。だからこそ、競合他社との差別化につながるのです。お客様から信頼を勝ち取り、専任媒介を取得するために建物の不具合の基準をしっかり把握してください。
尚、最終的に建物の不具合の有無は、専門的な調査を行わないとわかりません。安易に「絶対大丈夫です」と言うとトラブルになる可能性があるので注意してください。詳細については、建物状況調査を行える資格をもった建築士などに調査をしてもらうことをおすすめします。