誰もが笑顔でいられる仕事を
不動産業者をつなぐHUB的存在に
株式会社 南勝
印南 和行
- お客さまに寄り添った仕事がしたい
その思いが新たな世界へ - インスペクションはお客さまの不安を解消し
不動産業者にとっては信頼の証となる - お客さまの不安や不満を不動産業者にお伝えしたい
- 水戸黄門の印籠のようなものはない
1〜2%の積み重ねをどれだけ多くやっているかがカギ
現在、インスペクション専門の(株)南勝を経営しながら不動産コンサルや 研修も行っていらっしゃいますね。その経緯を教えていただけますか。
お客さまに寄り添った仕事がしたい
その思いが新たな世界へ
24歳のときに建設現場で旅費を稼ぎながら、日本全国を旅したことがありました。若かったですし、体力には自信があったのですが、実際はそんなに甘くはなかったです。体だけでは限界があると痛切に感じ、一級建築士の勉強をして資格を取りました。ちょうどその頃は、組織と自分の思いとの間に生じる、方向性の違いを意識するようになった時期でもありましたね。会社に属していると私の心情とは違い、会社の利益を優先させなくてはならない場面もしばしば起こります。もっとお客さまのために仕事がしたい、もっとお客さまに寄り添いたいという思いが強くなり、独立を決意しました。
そして一級建築士としてお客さまと接しているうちに、今度は「建物を建てるだけではダメだ」と考えるようになったんです。家を建てるまでのプロセスでもお客さまのお悩みはいろいろあります。お金のことや不動産の取引についてもサポートが必要です。そこでファイナンシャルプランナーや宅地建物取引主任者(現・宅地建物取引士)といった資格もいろいろと取得し、会社を立ち上げて不動産コンサル業へと足を踏み入れました。
こうして建築現場から不動産業界へと世界が広がっていったのは自然な流れでした。私が常に心がけているのは、常にみんなが笑顔になる仕事をすること。インスペクションやセミナーでお伝えしている売却のノウハウは、そのためのツールとも言えます。
インスペクションについて、その意義や役割をどのようにお考えですか。
インスペクションはお客さまの不安を解消し
不動産業者にとっては信頼の証となる
当時はインスペクションというものはあまり知られていませんでしたが、私は確実にニーズがあると思いました。インスペクションとは、第三者の視点で、建物がきちんと建てられているか、欠陥や劣化がないかを検査・診断するものです。
不動産取引をするとき、欠陥がないか不安に思う方は結構いらっしゃいます。インスペクションを行うことは、見えない部分も明らかになるので、その不安を解消する一助として有効です。さらに私はただ検査するだけでなく、不具合などが見つかった際には専門家としての見地から原因を推測して、どう対処すべきか、工法やおおよそかかる費用までアドバイスします。
この中立な第三者の目、というのがとても重要なんです。買主と売主・仲介業者の当事者同士ではそれぞれの言い分があり、時としてトラブルに発展し兼ねません。ニュートラルな立場の知識と経験のある専門家が検証することによって、双方に理解し、安心していただくことが可能です。売主さんや業者さんにとっても、きちんとした物件であるという、いわばお墨付きとなります。
例えば、テレビで物件の床が傾斜していないか、ビー玉を転がしてみるといった光景を目にしたことはありませんか? もし実際にビー玉が転がったとしたら、お客さまは不安になるでしょう。でも、人の手が作るものですから、多少の傾斜がつくことはあります。どこまでが許容範囲で、生活に支障がないものなのかを診断するのが私たちの仕事です。このように、第三者の意見によって無駄な衝突やトラブルを避けることにもつながるのです。
なぜ、不動産売却のノウハウを不動産業者さんにお伝えするセミナーを?
お客さまの不安や不満を不動産業者にお伝えしたい
私が始めた頃は、まだあまりインスペクションというものが一般に浸透していませんでした。しかし、お客さまと同行していろいろと調べている私たちを見て、「アイツは何者だ?」「なんで検査にそんなにお金をかけるのだろう?」と興味を持ってくださる不動産会社の方が増えていったんだと思います。ある不動産会社の社長さんから質問を受けて、いかにお客さまが不安に思っていらっしゃるかをお話ししました。すると私のやっていることを教えて欲しいとご依頼いただいたんです。
私はこれまでお客さまと一緒にいろいろな物件を見て、お客さまのご不安やご不満をたくさん聴いてきました。これらのお声が、不動産業者さんにどのくらい伝わっているかというと、意外と伝わっていないんです。不動産業者さんは顧客の満足値を上げるためにもお客さまのお声を知りたい。であるならば、そのお声をお届けすることこそが、私がやるべきことではないかと考えました。そしてそのような勉強会のご縁から、不動産会社のコンサルをやらせていただくようになり、今では不動産仲介業者の方々に向けてのコンサルや研修がライフワークとなっています。
おかげさまで現在、お取引いただいている会社は100社を超えます。これまでに実施したインスペクションの件数1,000件以上、講演をさせていただいた会社は5,000社以上。圧倒的な数の現場で積み上げた実務に沿ったノウハウ、クライアントから入ってくる新しい情報をお伝えしていることが私の強みです。今までお付き合いいただいているさまざまな会社での成功例、そして時には失敗例を、他の会社で活かせるよう提案をする。私の役割は、間に立って必要な所に必要な情報を伝える、HUB的な存在であることだと思っています。
セミナーでは、どのようなことを話されているのでしょう。
水戸黄門の印籠のようなものはない
1〜2%の積み重ねをどれだけ多くやっているかがカギ
セミナーで不動産会社の多くの人が求めていらっしゃることは、簡単に言うと「どうすれば物件を預かれるか」ですね。 私がお話しするポイントは3つ。1つは一括査定サイトでアポイントをとること。2つ目は訪問査定で当社独自のツールである「簡易インスペクション」を取り入れること。そして3つ目はどのように売却していくか、戦略をしっかりと立てて売主さんに提案することです。つまり、行き着くところは“お客さまの立場に立って、早く、高く売る”。これが極意です。
セミナーではより具体的なノウハウをお伝えしていますが、その一つひとつは、契約率がほんの1〜2%上がる程度に過ぎないものです。でもその小さなプラスαを積み重ねていくことで信頼を得て、選んでいただけるようになると考えています。
水戸黄門の印籠のような、これだけやれば絶対に選ばれるという方法はありません。地道にお客さまのためにできることをコツコツとやっていくしかないんです。これからも変わらずお客さまから望まれることはきめ細かいフォローではないでしょうか。近頃ではだいぶん不動産業者さんの意識も変わってきましたが、これまでにありがちだった“売りっぱなし”は通用しなくなります。長く付き合える、忘れられない努力が必要です。
そして、結果を出す人と出さない人の差は、行動するかしないかの違いなのです。
イイタン一問一答
出身は
品川区です。
現在のお住まいは
奈良県です。とてもいいところですよ。
好きな駅は
旗の台駅。幼い頃育ったところです。実家があるので、出張のときは今も訪れます。
不動産業界に入ったきっかけ
自分の経験が不動産業者の方のお役に立てればと思ったからです。
不動産業界の楽しさとは
セミナーを受けた方から「お客さまから選ばれた」とご報告をいただいたときは最高に嬉しいですね。
尊敬している人
松下幸之助。考え方が好きです。「運がいいですか」という問いに対して「はい」と答えた人は採用するというエピソードに共感します。結局人間はスイッチの入れ方だと思うんです。“運がいいレーダー”を働かせれば幸運も舞い込んでくると思っています。
イイタンについてどう思いますか
不動産業は人と対する仕事なので、自分を知ってもらうのは大切なことだと思います。そのためのツールとして絶対にあった方がいいですよね。
編集後記
印南さんの笑顔はとても温かくて、周りにいる人も笑顔にする不思議な魅力があります。一方で仕事に対する姿勢はとても誠実で、自分がやるべき使命と常に向き合っているという印象でした。その行動の指針は「必要とされているものは何か」ということ。昔も今も業界で1番になりたいというようなことは考えたこともないのだそうです。2018年4月から中古の売買に関して、インスペクションの案内が義務化され、今後ますます同業者が増えていくことが予想されます。もしインスペクションが知れ渡り、他にやる人たちが十分にいるとなったら、そこに固執せずさらに新しいことに挑戦するかもしれません。とはいえ、印南さんは日本全国を駆け回っている、不動産業界で今引っ張りだこの人気セミナー講師です。印南さんのセミナーやコンサルで、これからますます不動産業界が成長していくことを、お客さまに寄り添う不動産業者さんが増えることを期待しています。
取材/撮影 和田 文/瀬野 芙美香
History
1993年
建築の専門学校を卒業。建設会社で現場監督として働く
1998年
一級建築士の資格を取得、独立。その後、個人向け不動産コンサルの経験を積む
2011年
インスペクション専門会社(株)南勝設立。
不動産仲介業者向けのコンサルやセミナーを開催し、業界の改革を図る。
Pick Up Item
【万年筆・ボールペン・シャープペンシルのセット】独立をするときに奥様から贈られた万年筆・ボールペン・シャープペンシルのセット。仕事をしているときもいつも一緒です。
- 会社名
- 株式会社 南勝(Nansho)
- 代表取締役
- 印南 和行 (いんなみ かずゆき)
- 所在地
- 〒532-0011
大阪府大阪市淀川区西中島5丁目11番9号 新大阪中里ビル - FAX
- 03-5539-3907
- info★nansho-group.co.jp ※★を@に変えて送信してください。
- 保有資格
- 一級建築士、宅地建物取引主任者、ファイナンシャルプランナー(AFP)、一級建築施工管理技士、住宅性能評価員、不動産コンサルティング技能士試験合格、住宅ローンアドバイザー、賃貸不動産経営管理士
- 社員・パートナー建築士
- 全国 35名